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学校の特色を生かし、市民講座・フィールドワークを活用した総合的学習へ

「世界の子どもたちに幸せを〜国際医療支援〜」
「現代医療オープンゼミナール」
「アントレプレナー入門」

進学校でありながらも積極的な総合的学習を展開

「総合的な学習の時間(以下、総合的学習)」が、平成15年度から正式に高校のカリキュラムに取り入れられた。従来の教科のように教科書もなく、学校の特色を生かして自由に内容が決められる新しい授業である。目的は、生徒たちの興味関心を広げ、自ら学び、自ら考える力を育む、いわゆる「生きる力」の育成だ。

しかし、多くの高校、特に進学実績を重視する高校にとっては、総合的学習は直接受験勉強に役に立たない時間。学力の低下を避けるため、通常の授業を減らさずに、これまでもやってきた文化祭・体育祭の準備や修学旅行の事前学習を振り替えたり、通常教科の補習に使ったりと、消極的に決められた単位数をこなす学校も多い。

こうした風潮に反し、愛知県屈指の進学校である東海高校は、総合的学習の趣旨に添った骨太なカリキュラムづくりに取り組んだ。全1年生を対象に、月曜6限の1時間、前期又は後期において、様々なテーマを中心とした全10コースの中から好きなコースを選択するというものだ。ASK-NETは、この10コースの中で、学校の特徴を生かした3つのコースの企画立案・運営を支援している。

学校の特色を生かし、市民講師とフィールドワークを活用

東海高校の特色の中に、卒業生の4分の1以上が医学部に進学するという高い医学部進学率がある。こうした点を重視して、医学に関係する2テーマを企画立案。ひとつは貧困にあえぎ、医療を受けられず亡くなっていく人々が多い発展途上国に対し、医療を通しての国際支援活動を中心テーマにした「世界の子どもたちに幸せを〜国際医療支援〜」。もうひとつは、現代医学の様々な問題点を医療関係者とともに話し合う「現代医療オープンゼミナール」だ。

また、東海高校卒業生の独立独歩の気風を生かし、自らビジネスを起こしていく起業家(アントレプレナー)の考え方にふれる「アントレプレナー入門」である。3コース全て、社会で活躍する様々な市民講師を招いての授業とフィールドワークを活用し、ただの机上の空論に終わらせず、リアリティ(現実感)を高めたカリキュラム運営を行った。また、生徒の意見発表・ディスカッションなど、参加型のワークショップも重視している。

東海高校・総合的な学習の時間で行われた市民講師(敬称略)とフィールドワーク
国際医療支援
市民講師 モアゼム・ホセイン(バングラデシュ・医師)
バングラデシュに寄付を集めて「あいち病院」を設立した経緯、直面した困難などを語った。
市民講師 ハマダ(エジプト人医師・留学生)
エジプトにあるサラセミアという風土病と骨髄移植の重要性についての紹介。
市民講師 小野真理子(弁護士)
イラク開戦前に現地を訪れ、戦争で苦しむ民衆の状況と支援の大切さを伝えた。
市民講師 佐藤 光(アジア保健研修所AHI・事務局長)
医療技術の研修を通した国際医療支援を紹介。
市民講師 田所真生子(名古屋大学国際開発研究科)
ディベートのジャッジとして登場。
フィールドワーク 八事日赤病院・国際救援部
八事日赤病院を訪問し、イラン大地震救援とスーダンでの支援活動についての説明を受ける。
 
■現代医療オープンゼミナール
市民講師 宮崎 景(名大病院・総合診療部医師)
ゼミ全体のアドバイザーをつとめるとともに、新しい「総合診療部」という考えを紹介。
市民講師 西川修(中国医学医師・増子記念病院)
東洋医学と西洋医学の長所、短所を説明し、両方の良さを生かした医療の大切さを説いた。
市民講師 長谷部茂人(日本ホリスティック医学協会)
現代医療の矛盾を埋める「ホリスティック医学」という考えを紹介。
フィールドワーク 医療事故情報センター
医療事故に直面した人々の裁判を支援するセンターを訪問し、弁護士から医療裁判について説明を受ける。
フィールドワーク 名大医学部附属病院
病院の医療事故に対するリスクマネジメントに関する講演とICU(集中治療室)の見学を2週連続で行った。
フィールドワーク 名大医学部附属病院
病院の医療事故に対するリスクマネジメントに関する講演とICU(集中治療室)の見学を2週連続で行った。
 
■アントレプレナー入門
市民講師 筒井宣政((株)東海メディカルプロダクツ)
娘の心臓病と直面したことから、カテーテルの開発に取り組み実用化した起業家。
市民講師 福間功史((株)トラフィックシム代表取締役)
起業に至った経緯、苦労したこと、起業してわかったこと等を語った。
市民講師 久野美奈子(NPO法人 起業支援ネット)
起業を支援している側から、起業について必要なこと、心構え等の社会的な側面を語る。
市民講師 五十嵐英昭(塾を起業中)
夢をもつことの大切さ、大切なこと、これから起業をする気持ちを語る。

<生徒の感想>

「単なる授業だけじゃ、自分のやりたいことがわからないまま大人になってしまって、人生の一番良い時期を台無しにしてしまいそう」。(アントレプレナー入門)
「学校の先生以外の、学外の先生方からの話を聞き、自分の視野が広がった」。(アントレプレナー入門)

「生きるっていうことは、人に役に立つことをすると同時に自分を高めていくことだと思った」。(アントレプレナー入門)

「現場の人々の生の声を聞かせて頂いたこと。本で読んだり第三者の方から話を聞くよりも、リアルでよかった」。(国際医療支援)

「自分たちがわかっているようでわかっていないことがあるということが、わかった」。(国際医療支援)

「これまで漠然としかイメージできなかった医療に携わる者の責任の重さの輪郭が見えてきました。医学部に入った後で自分には適性がないのかもしれないと悩む人がいるのも納得です」。(現代医療ゼミ)

「医学、というものを根本から考えさせられた。患者にとって何が幸せなのか・・・。医者というものの実体に近づいたと共に、難しさを痛感できた」。(現代医療ゼミ)

「自分たちでレポートをまとめ、発表したことが印象に残った。友達の意見を聞いて考えたり、専門家の人々に話を聞き、ICUなども見学でき、普段の授業で到底得られないものができて本当によかった」。(現代医療ゼミ)

「自分は将来、何をしたいのか?」を考える機会に。

多くの高校生にとって、目の前にあるテストや授業、部活などをこなしていくことだけでも手一杯で、「自分は将来、何をしたいのか」を深く掘り下げて考える機会はあまりない。しかし、高校時代までにどんな人に出会い、どんな現実にふれたかは、「将来選択」という問題を解く鍵となる。この総合的学習は、視野を広げ、自分の個性を知り、将来像を見いだすことにつながる貴重な機会になるのではないだろうか?

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