東京都出身。コーチングシステムズ代表。青山学院大学にて心理学を学んだ後、上海留学を経てプライスウォーターハウス上海事務所に勤務。帰国後株式会社コーチ21(現株式会社コーチA)に入社。主にコーチング研修の企画、営業を担当する。2001年2月退社。コーチとして独立し現在にいたる。
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チャンスの神様には前髪しかない。 捕まえるためには、自分の夢を語ること。
「チャンスの神様って知ってる?神様が近づいてくるのが見えたら、どうしようって迷ってちゃダメ。目の前を通りすぎる瞬間につかまえようとしても、後ろからはつかまえられない。チャンスの神様には前髪しかないんだよ」
このひとことから、稲垣さんの1年間を通しての授業は始まった。昨年度、弥富高校の総合学習授業を担当し週に1回「なりたい自分になる」をテーマに生徒たちと共に過ごした。
「チャンスをつかむために必要なことは、語ること。夢は語らなきゃ実現しない。思うだけじゃダメなんだよ。自分の言葉で夢を語り出した時、自然と周りの人があなたを応援したくなる」
夢を語ることはこわい。自分でもまだあいまいなものを口に出してしまうと、他の人にはどう思われるだろうか?最初は誰もが下を向いていた。しかし回数を追うごとに教室の空気が変わり始め、最初は自分の夢もわからなかった子がポツポツと話し出す。
「誰にも言ったことがないんだけど、実は僕は小さい頃に入院したことがあって、その時から看護士になれたらいいな、と思っている」
生まれて初めて、人前で自分の夢を語った子がいる。バイト先で自分の夢を話して『高校生なのにしっかりした夢があってすごいねぇ』と誉められた子がいる。生徒の顔が、少しずつ上を向き始めた。こうしたことがあるたび、稲垣さんは強く心をうたれたという。
「正解のある授業じゃないんです。通常の学校教育は『正しい』か『間違っている』かしかない。正解を探そう、いいことを言おうと思うから語れないんです。でも私の授業では『あなたはどう思っているの?』って聞き続けたんですね。だんだんみんながわかってくれたようです。正しいことを言わないでも、自分の思いを語るだけで、人は話を聴いてくれる。そして自分には十分な価値があるってことが」高校生と1年間接することで彼女自身にもいろいろな学びがあったという。
「高校生って先生に対しては発言できても、前に立ってクラスの仲間に発言するのにはものすごく抵抗がある。周囲や仲間の反応に対してすごく敏感なんですね。大人になれば、経験からいろんな対処ができるんだけれど。でもその感性があるからこそ、今だからこそ感じられること、経験できることはたくさんあるはず。高校生の大きな可能性を感じることができました」
誰もが本当は答えを持っている。 自分で選んで、責任を持つ人生は楽しい。
彼女の本業は「コーチ」である。ビジネスの世界で注目を浴びる「コーチング」というコミュニケーション技術を知っているだろうか。
コミュニケーション(主に質問)していくことによって、相手が実現したい目標・ゴールを明確にし、達成・実行できるようにサポートする技術である。彼女はプロのコーチとして、経営者や個人顧客と定期的なコミュニケーションをとることで彼らの夢の達成をサポートしている。
彼女がコーチングに出会ったのは7年前。当時、コーチングを習っていた友人が彼女にこう聞いた。
「稲垣さんはこれからどうなりたいの?」
そんなことしっかり考えたことがなかった。『それがはっきりしていたら、私の人生はもっと楽しくなるだろうなぁ』というのがコーチングへの興味のきっかけ。それからコーチングの道に入っていく。コーチング事業を行う職場では、実際の生活が日々コーチングの毎日だった。
「最初はとまどうことばかりだったんですよ。それまでの職場では上司は命令する人だったのに、コーチングの職場の上司はことごとく質問してくる。でも『これはどうするの?』『どう思う?』と聞かれるたびに、自分がここで必要とされているんだ、私は大切にされているんだ、という気持ちがグンと大きくなるんですね。そして自分で考えて、自分で答えを出すことの大切さもわかった。私自身がコーチングによって成長させてもらったと思いますね」
結婚を機に東京から三重県桑名市に引越し、それを機会に独立して3年。全国でもプロのコーチとして食べていける人は多くはないが、30社程度の固定顧客を持ち、他にも研修や講演に呼ばれたりと多忙な日々を過ごす。
「コーチングによって私自身が学んだことは、自分の人生に責任を持つということ。私はどうなりたいか、どう思っているのか。自分の人生への質問に対して、答えるのは私の責任なんです。でもね、そういう人生の方がずっと楽しいってことがわかった。誰もが、本当は自分の中にうまくいくやり方や考え方を持っているんです。でも、それに気づいていないだけ。誰か話を聴いてくれる人に自分の思いを話すだけでも、きっと全然違う結果になるんですよ」
[取材・文 平田 節子/写真 山田 亘]
愛知父母懇中ブロック 一斉地域集会
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